日本の美学 不完全さ
この国の美学の一つに不完全の美学というものがあります。
これは欧州にはないもので、なんでこんな美学が生まれたのかなと考えると、無常観に着想を得ていると思います。
千利休が不完全の美学を語り、清少納言も満月より幾分か欠けているほうが美しいと言われました。
不完全の美学といえば、よく宮大工なんかは、敢えて神社の柱を一本逆さにつけたり、一部だけ敢えて塗装を施さなかったりします。
これは、完成したものはいずれ滅びる、静かに滅びへと向かうという無常観に基づくものです。
諸説あるかと思いますが、アップルのりんごが欠けているのは、スティーブ・ジョブズが禅を学んでいたことと関係があるんじゃないかと勝手に考えています。
各国の世界創生神話というのは様々なものがありますが、日本の古事記において、日本の神々は国造りを途中で中断してしまいます。
こういった話は世界でも珍しく、古事記から見るとこの国は未完成なようです。
だからこそ、この国は成長の余地があり、完成していないからこそ滅びには向かわない。そして未完成だから美しい。そういったメッセージを感じます。
また、日本は多神教であります。古事記にも沢山の神様が登場し、人間の様に愚かな感情に駆られて失敗することもあります。
イスラムやキリストにおける創生神話は神が世界を作ったというお話ですが、日本の神様は世界ができたあとに生まれたというものです。
世界の神々に比べると愚かで無力な我が国の神もまた不完全であり、それ故に美しく、愛着の湧く存在であるのかもしれません。