不安動機
妻の尊敬している長所の一つで、強い不安動機を持っていることが挙げられます。
妻は看護師なのですが、人の生き死にを左右する現場のプレッシャーと予測不能の事態がいつ起こるかわからないストレスと向き合ってきました。
妻は私と正反対で、不安になりやすく、心配性といった性格です。
そんな気弱な彼女が過酷な看護業務と向き合う為に編み出したのが、不安動機をもって学ぶことでした。
不安なことは徹底的に勉強して、未熟な自分への不安をなくそうといったスタンスです。
二か月ほど前に妻は転職し、新しい職場になって学ぶべきことが増えました。
新しい職場と業務内容が変わることへの不安があったのでしょう。
彼女は初出勤からの三日間、帰宅してから眠るまで新しい業務の医療知識をとにかく詰め込もうと勉強し、四日目には院内の業務の殆どを理解するに至りました。
その後、新たに分からないことが出てきたらまた徹底的に勉強するの繰り返し。
休日、本屋に行くといつも新しい医学書を吟味して、良いものがあれば自費購入する。
「この本患者さんに説明する時分かり易いから」なんて言って、説明ページをコピーして職場に持ち込む有様。
勉強することは不安をなくす為であり、自分の為にやっているのだから、
給料がもらえないから学ばないとか、
業務時間外だから学ばないとかそんなことは一切関係ないわけです。
彼女の学びの動機は不安であり、不安をうまく動機に変換してスキルアップを図っているのでした。
私はどちらかというと物事を楽観視する質で、「困ってから考えればいいよ」なんて指導をしています。
しかし、ミスを取り返すことが出来ない医療現場においては、私のようなスタンスを持つ人はとんでもないリスクでしょう。
昔、島田紳助さんの出演する学習教材?か何かのCMで、
「不安でええねん。不安やから勉強するねん」みたいなCMがありました。
彼女のはまさにそれでしょう。
不安動機は他の専門職にも必要な能力であると思えます。
不安動機とは自分の実力に不安を抱いてそれを動機に変換する力です。
人がスキルアップを図る動機には2種類あります。
①プラス動機
純粋に楽しい。やりたい。褒められたい。
②マイナス動機
与えられた業務への不安。やらなくてはいけない。怒られたくない。
マイナス動機と呼称してしまうと、いかにも「仕方なくスキルアップ」感があり、なんだか良い印象を受けませんが、結果としてスキルが身に付くのであればどちらの動機でも同じことです。
もしあなたが、フリーランスや経営者、決裁権を与えられた社員のように先頭に立っていない場合、仕事は与えられるものだと思います。
与えられた仕事は、やりたいことかもしれないし、やりたくないことかもしれません。
しかし、日曜日の夕方、サザエさんを見ると憂鬱になってしまうのであれば、やりたくないことでしょう。お金が貰えないのならやらないことなのでしょう。
そういった業務に直面した時、マイナスから動機を作る能力は多いに役立つと思います。
SE職の友人が、「動けばいい」で満足して成長しない素人ばかりと嘆いている様子を見て、こう思いました。
その素人たちは、不安を感じる能力が欠如しているんだろう。不安になるほどの想像力を持ち合わせていないんだろうなぁと。
想像力とは、知識と感性の合わせ技です。
仕事における想像力の重要性を書くと長くなるので、また気が向いたら書きます。