リスクを取らないリスク
この話は随分昔に読んで、たまに思い出します。
エリクサーという貴重なアイテムをここぞの場面で使える人と、今後の為に温存しておく人。
この話は、決断できる人と決断できない人と括られていますね。
どちらが正解であるかは状況によって異なるので一概には言えません。
また、場面によってエリクサーを使うか、使わないか。
人間は多様な生き物なので明確に二分することは出来ないでしょう。
ただ、エリクサーを使わないことを決断した人に考えていただきたいことが一つあります。
それは、
リスクを取らないリスクについてです。
例えば、あなたはキャリアアップの為に転職活動をしています。
①今の会社に残ると3年後には部長職になれることが間違いない。
②転職先では最初は今より収入がダウンするも、成果を上げれば今の会社で部長職になるよりも早く大きな収入が得られ、本当にやりたかったことができる。そしてあなたには成果をあげる自信がある。
こんな2択に迫られた時、どう考えるでしょうか?
私だったら、②を取りそうな気がします。
しかし、次の前提が加わったらどう考えが変わりますか?
今年高1の息子がとても賢く、現在通っている高校は進学校。
将来は医者になることを目指している。
3年後に医大に通わせる為には今の収入ではとても足りないが、今の会社で部長職に付ければ問題なさそうだ。
もし転職して成果を出せなければ、息子の夢を諦めさせるか、多額の奨学金を借りさせなければいけない。
急に②のリスクが大きくなったように感じられるかもしれません。
これは、実際に私の前の上司に起こった問題です。
彼は長い間①の選択を取り続けています。今も。
事あるごとに、①の選択を取ったことは間違っていなかったと私に話します。
必死に話すほど私は「この人は後悔しているんだな」と感じてしまいます。
自分に言い聞かせようと必死になっている様に私の目には見えていました。
そして、話終わりにはいつも、「でも子供たちには迷惑を掛けられないから」と締めくくるのです。
私に今子供がいないから言えることかもしれませんが、
家族も含めてリスクを取るかどうかを考えるべきでしょうと思ってしまいます。
その上で、①を取るのであれば致し方ないことですし、その選択が間違いとは言えません。
しかし、私には彼が「家族」というワードで思考停止して決断をしているように見えてしまうのです。
だから彼は未だに後悔を引きずっているのではないかと思うわけです。
彼は若い時から有能で成果を上げていましたが、①の選択を取り続けてきました。
そして、自分の子供たちが大きくなるまで①を選択し続けてきました。
冒頭でお話したリスクを取らないリスクとは、この問題においては時間のことです。
こと転職においては、独り身のうちに、結婚して奥さんと2人のうちに、子供が小さいうちにと少しずつ②のリスクが膨らんでいくのです。
だからこそ、改めて考えて欲しいと思います。
今後直面する決断において、リスクを取らないリスクというのは存在しませんか?
そこまで加味して決断していますか?
落合陽一さんがテレビか何かで言っていた言葉で、好きな言葉があります。
リスクを取れるのが人間の良さである。
機械と人間の関係をテーマにされている落合さんらしい物の見方だと思います。
例え愚かな場面であっても、エリクサーを使えることはある種人間らしさと呼べるのかもしれませんね。